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補聴器業界の問題点
Problems

補聴器業界の問題点

  • 補聴器の認識(医療装具 or 雑品)
    補聴器は医療装具ではなく雑品として入ってきたので耳鼻科医が直接取り扱うことはほとんどありませんでした。
    私も医者になる前は、補聴器は電気店、眼鏡店で扱っているものだと思っていました。
    聴覚をするために耳鼻科医になったものの私の先輩が補聴器を研究していたが私が直接携わることはありませんでした。
    当時私は耳鳴の測定の研究に忙しかったからです。
    補聴器を装用している患者さんからの良く聞こえないとかうるさいとかを聞かされているとなかなか難しいものだと感じていました。
    私が本格的に補聴器を扱うようになったのは、医院を開業してからです。
  • 誤解によるクレーム
    聴力が低下すると、低下した値(dB)に1/2を掛けた値がだいたいのゲイン(利得)になります。 ほかにpogo法というのは低音のゲイン5-10dB下げる方法があります。 アナログは音響特性があまり思ったように変えられないのでかなり難しく、その上仮に調整できたところで満足してもらえるとは限りません。 クレームの代表的なのは、周囲騒音(ドアのバタンと閉まる音、足音、食器の音、蛇口から出る水の音、換気扇の音、新聞をめくる音、交通騒音など)がやかましいとか自分の声がこもるとか声は聴こえるが内容が分らないなどが多いです。 中途失聴は突発性難聴でもない限りたいていはゆっくりと進行していき気が付いたときはかなり低下しています。 難聴の期間が数年以上のケースが多いです。 長期にわたり音を聴いていないと補聴器を装用して音が入ってくると非常にやかましく感じます。 周囲騒音は聴力が正常だと普通に聴いているというか聴き流しています。 難聴の脳は過敏に反応し聴き流すことができません。 しかしそれも数日装用していると慣れてきて必要な情報とそれ以外の聴き分けができるようになります。
  • 1.初期はターゲットゲインの70%から始める。
  • 2.2週おきにゲインをターゲットに近づける。
このように音声情報を十分に聞き取るだけの利得を入れると周囲騒音もそれなりに増幅されるので苦痛も大きくなる。音声情報をとるか周囲騒音を避けるかのジレンマに陥る。補聴器を使えなくする最も大きな原因である。このジレンマに陥らないように周囲騒音に慣れつつ必要なゲインを入れることが肝要である。多くの場合環境音に慣れるまでが苦痛を伴う。
  • 補聴器業界のあり方
    補聴器の使用者がモチベ−ションを下げずに慣れるまで我慢ができるかが正念場です。
    医療者の励ましが必要で、説得力も必要になります。
    もちろん信頼関係がないとできません。
    ビジネスを超えた何か使命感がなければなかなかできないと思います。
    私自身も、やはりこの点が医療なんだと考えています。
    お客様相手だと難しいでしょう。
    補聴器適合検査を筆頭に聴覚検査というインセンティブが販売店にはありません。
    そのことがさらにリハビリを困難にしています。
    医療関係者はよくいい加減な業者による販売を問題視しますが、彼らは販売益だけでビジネスを運営しなければなりません。
    良心的にすればするほど経費が掛かり販売益が増えないというジレンマに陥るという非常に問題の多い業界です。
    私は彼らをバッシングする気はありません、我々にその資格はないです。
    それを放置したのは我々医療者なのだから。
    歯科医が義歯やインプラントを全責任を負って供給しているように我々耳鼻科医が補聴器を同じように供給すればいいのだから。
    100%医療装具である補聴器がそのように扱われていない現状がそもそもの問題です。
    補聴器を医療者が100%責任を負って供給できるように尽力したいとは考えています。
    医療者にとっても補聴器業界にとっても患者にとってもwin,win,winの関係になると考えています。